さっそく窓をあけて箒で埃を集め始めると、誠さんは何食わぬ顔で椅子に座る。
いつものように、始める読書。
愛琉さんの時は、恐怖の緊張感が。
誠さんの時は、居心地の悪さが。
できれば、誰にも部屋にいてほしくないわ。
掃除する瞬間まで気を配らなきゃいけないなんて、疲れちゃうもの。
「ねぇ誠さん、いつも本を読んでるけれど飽きないの?」
沈黙がつらくて、適当な話題をふる。
栞を挟んでパタンと本を閉じる音。
「別に、飽きませんよ。
だいたい、飽きていたなら読んでいません」
「はあ……なるほど」
むむむっ、これじゃ会話が続かないじゃない。
納得してる場合じゃないわ。
「手が止まっていますよ」
気まずさに悩んでいたら、知らない間に作業を怠っていたらしく注意されて。
「ごめんなさい」
何回目になるか、もはや不明な謝罪。
カウントしたら一日で二桁にはなるんじゃないかしら。
再び手を動かした時、次に口を開いたのは予想外にも相手からだった。


