「ヒメは、過去を背負ったぼくたちが、青い鳥を探すのを手伝ってくれたんだよ?」
佐久間さんの表情が、あまりにも優しくて温かくて。
返す言葉が出てこない。
「鳥籠に入ってたぼくを、ヒメが出してくれたんだよ」
何度も、何度も首を縦に振る。
こんなに感謝してもらったのは、初めて。
こんなにありのままの自分を認めてもらったのは、初めて。
「すず、どうした?」
慌てた里音の声に、今度は首を横に振る。
「なんでもない」
「なんでもなくないだろ」
「先輩涙目になってるよ」
「ヒメ?」
みんなが顔を覗き込んでくるから、俯いて両手で顔を覆う。
立ち止まったあたしのせいで、みんなも足を止めていた。
嬉しかった。
でも悲しかった。
エシャルと人間界の両方を知って、あたしは人間界に逃げたくなってる。
姫という立場を前提でしか評価されなかったあたし。
人間界では、誰だって本当の自分を見てくれる。
誰も、あたしを特別扱いしない。


