幸せを……運ぶ?
「つまりさ、俺たちにとっての“幸せ”は先輩ってことだよ」
「あたし?」
恐る恐る自分を指差して聞き返すと、もちろんと頷かれて。
「ヒメがいなかったら、ぼく外の世界を知れなかったよ?」
「すずは、オレたちに“幸せ”があることを教えてくれたんだ。
気付かせて、くれた」
3人から突然ありがとうと言われて、つい熱くなる頬。
そんなに改まって感謝されると、恥ずかしい。
「ねぇヒメ。
ヒメは気づいてないかもしれないけどね、ぼくたちの周りにはたくさんあるよ、しあわせ」
両手をいっぱいに広げて、あたしを見てくる。
そこで、佐久間さんが懐かしそうに物語を教えてくれた。
タイトルは“しあわせの青い鳥”。
「貧乏な2人の主人公がね、夢の中で過去とか未来とかに行くの。
そこで幸福の象徴である青い鳥を探すんだって」
話はさらに、こう続く。
結局どこにも青い鳥はいなくて、朝目を覚ますと自分たちの身近にある鳥籠の中にいたのが、青い鳥だった──と。


