部屋に、中途半端に生温い風が入り込む。
「てめぇら、なに俯いてやがる。
洋館に来たヤツは、全員家族だろーが」
ふと頭上から声がして、見上げてみればそこには
「愛琉さん!?
どうしてっ……」
いつ入って来たのかもわからない。
気配を消していたの?
いいえ、まさか。
今までそこにいたかのように、当たり前に彼はあたしたちの目の前に立っている。
そして、ありふれた日常のように偉そうに見下してくる。
窓は開けっ放し。
この部屋は障子を開ければ、すぐ縁側。
庭から侵入したと考えるのが、最もな気がするわ。
「帰んぞ」
あたしたちが驚きから固まっていると、愛琉さんは笑いもせず言った。
よくよく考えたら、愛琉さんの笑った顔なんて見たことないかも。
…何かを企んでる時以外。
「おまえら、誠のこと信じてねぇのかよ。
あいつも悩んでんだ。
少しは信じて見守ってやれよ」
あぁ、洋館の玄関先では冷たいこと言ってたくせに。
本当は愛琉さんも、誠のこと考えていたんじゃない。


