自分の子どもに成功してほしいと願うのは、親の身勝手。
だけど、あたしたちが誠を洋館に連れ戻そうとするのも同じ。
あたしは、たぶん嫌だったんだ。
誠が洋館から、いなくなっちゃうこと。
誠の口から直接、まだ何も聞いていないじゃない。
大切なことは、まだ何も。
泣きじゃくる佐久間さんに、俯くあたし。
里音と恋千くんが、どんな顔をしているかまではわからない。
しんとした部屋に、さっきまでの勢いはもうなかった。
ただ、
「所詮君たちは他人だ。
誠のことは、親である私たちのほうが理解している」
そんな風に言われて、言い返す言葉が見つからない。
一緒に過ごしてきた時間の差なんて、明らかだもの。
血の繋がりには、適わないのかしら。
ましてや、あたしが誠と一緒にいたのはほんの数ヶ月。
佐久間さんに誘われて、こっちまで泣きそうだわ。


