「そうやって、未来を語って期待するから誠は───」
「いい加減にしないか!」
さすがに向こうも我慢の限界がきたらしい。
恋千くんの声をかき消すほどの怒鳴り声が、部屋中にこだました。
「これは篠井家の問題だ!
君たちが首を突っ込んでいい話じゃないだろう!」
その怒鳴り声に反応するように、背中にくっ付いていた佐久間さんに異変が。
あたしの服を掴む手が震えて、鼻をすすっているみたいで。
この場に生まれたわずかな静寂。
「もうっ……やめようよ……っぼくたちは、ケンカしに来たんじゃないんだよ……っ!」
必死な声が、全員の耳に届いた。
ゆっくり振り返ると、佐久間さんの瞳からは大粒の涙。
それを見て、あたしたちは一瞬で言葉を失った。
「怒っても、なにも解決しないよ……うぅっ、ひっく」
ついムキになっていたの。
誠の本心がわかるからこそ、洋館にいさせてあげなきゃと。
……言い争ったって、確かに解決の目処は立たないのに。
きっと、佐久間さんだけだわ。
物事を客観的に見れていたのは。


