「そんなことはないのでしょう?
あの子は家のことを最優先に考えてくれます。
あんな場所に、ずっといさせるわけにはいきません」
あんな……場所?
言われた言葉が、頭の中でループする。
「あなたたちに、誠の何がわかるんです?」
あんな場所、なんて言い方、許せない。
みんなのいる洋館を、バカにしないで……!
大きな怒りが込み上げてきて、そのまま文句を怒鳴り散らしそうになる。
拳に力を入れて、ひたすら耐えていると閉ざされていた襖がゆっくりと開いた。
「なんだね、君たちは」
そこで現れたのは、怖い形相の男性。
おそらく、誠のお父様。
「あなた、この人たちが誠を洋館に戻せと」
誠のお母様がそこまで言うと、お父様は眉間にシワを刻んでこちらまで足音を立てて近寄る。
「あぁ、君たちは洋館の。
無理な交渉はやめなさい。
誠はもう、あのような訳の分からない場所には戻らない」
テーブルを挟んで正面に座った彼を、あたしは全力で睨んだ。


