仕方ない、って。
それじゃ、本心は………
「あいつが決めたんだ。
ほっとけよ」
胸がぎゅうっと締め付けられて苦しい。
言い捨てて洋館に入ろうとする愛琉さんの手を、無意識に掴んでいた。
「止めないの?
迎えに行かないの?
本当は誠が洋館にいたいって、わかってるのに」
驚いた顔で振り返ったけど、それはほんの一瞬で。
「あいつが決めたことだろ」
「でも……!」
「どっちを選んでも絶対後悔すんだよ。
あいつは、ちゃんとそれを理解してる」
強い瞳に見据えられて、それ以上何も言えなくなった。
なによ、自分だけがわかったような口振りして。
愛琉さんは、結局誠のこと全然考えてないじゃない。
無理矢理連れ戻されてしまった彼のこと、悔しいと思わないの?
洋館へと入る後ろ姿に、心の中で問いかけて。
「それに誠の家のことだから、実際オレたちが口出しするのは間違ってるんだよな」
愛琉さんの言葉に続くように、力無く呟く里音。


