「ま、誠は家が嫌いみたいだけどね」
加えて、恋千くんが説明。
「周りから諭されるのに耐えられなくて洋館に来たわけだし。
簡単に言えば、洋館は家出先」
そこまで聞いたところで、里音がその場にしゃがみ込んだ。
「あいつ、本当はまだ帰りたくなかったんじゃないかな……」
さっきまでの騒がしさから、一気に静かになった気がする。
暖かいはずの気候でさえ、どこか寒い。
「どうして、誠は帰らなきゃダメなの?」
わかりきったことを訊くと、恋千くんは疲れた笑みを浮かべて答える。
「家出してすぐに見つかったの。
でも俺たち全員で誠の家族説得して、誠がここにいられるようにしたわけ」
「なら……」
今更帰る必要は、ないんじゃないの?
「それがさ、洋館にいることを許可する代わりに期限付きにされたんだよ。
その期限が今日で切れた」
そんな……っ。
「誠は、それでいいって言ったの?
無理矢理連れ戻されるのに、それでいいって───」
溢れる言葉を遮るように、こちらを見上げたのは里音の悲しそうな顔。
「仕方ない、の一点張りだった」


