できるだけ静かに扉を開けると、向こう側にはソファーに座って目を閉じるおばあ様の姿。
「ローナ、お帰りなさい。
一時帰宅なんですってねえ」
落ち着いたくすんだ赤色の膝掛けで足を覆って、品よく膝の上に手を揃えている。
近寄ってよく見ると、膝と手の間には何かが開かれたままだった。
「おばあ様、これは?」
尋ねると、目を開けてあたしへ優しく笑みを浮かべる。
「アルバムよ」
安心感のある声音が、そっと鼓膜を揺らした。
「アルバム?」
「そう、ローナの小さかった頃の写真よ」
見やすいようにと、こちらへアルバムを向けて。
「この左側にいるのが、あなた」
3人の赤ちゃんが写った写真を指差される。
左側の赤ちゃんは、橙色の髪。
記憶に残っていない、まだ幼いあたし。
「じゃあ、この2人は?」
真ん中の真っ黒い髪の赤ちゃんと、右側の桃色の髪の赤ちゃんを指差して訊く。
「この子たちは、ローナもお世話になっているリンスの孫よ」


