そう自覚して、言い聞かせればそれだけ苦しい。

街中で頭を下げられたり、そもそも“様”付けで名前を呼ばれることがつらい。


立場上、仕方ないこと。

それでも、まだ17年しか世界を知らない姫なのよ。

全然すごくなんかないじゃない。


あたしなんかより年長者を敬うほうが、よっぽど正しいと思うの。



人間界では、みんな平等だったのに。

特別扱いされるのって、優越感もだけど寂しさも伴う。


ふざけあって、笑いあっていられるほうが幸せ。



……あたしの幸せは、きっと無い物ねだりなんだわ。



明かりを消そうとして、ふと思う。

せっかくエシャルに帰ってきたんだもの、家族と過ごしたい。



寒くないように、上着を羽織って廊下に出る。

一番あたしの部屋から遠い、おばあ様の部屋を目指した。



お城の造りは、人間界の洋館とよく似てる。

廊下を歩きながら、改めてそんなことに気がついた。



「おばあ様、入ってもいい?」

ひとつの扉をコンコンと叩いて声をかける。

…と、すぐにどうぞという返事。