「あたし、魔法は───」

上手くできないの。

そう口を開きかけた時、教室の扉が勢いよく開かれた。


「姫様!
いきなり外出されては困ります」


ついさっきまで一緒にいた、教育係の人だ。

あたしが勝手にお城を飛び出したから追いかけてきたのね。



「ごめんなさい、もうお城に戻らなきゃ」


呼び戻されるのは不服だけど、今だけは感謝だわ。

下手に魔法を使っては、姫の面目丸潰れだし。


お城で用事があると言い訳し、魔法学校を離れた。









夜、久しぶりの自分の部屋。


桃色のカーテン。

純白のレース。

花の飾りがついた鏡。

甘い香り。

フカフカのベッド。



「はぁー‥」

ベッドにうつ伏せたまま、深いため息をつく。



今日は疲れた。

人間界では忘れていたけど、あたしは姫なんだ。

お城の外に出れば、みんなに期待の目を向けられる。



失敗なんて、絶対にできない。