髪を鷲掴みされて、引っ張られるようにあげさせられた顔。

思わずうしろへ足を踏み出したけど、背後はとっくに壁だった。


「土下座しろ」

冷たく降ってくる命令。



ど……土下座!?


「どうしてあたしが───痛っ」


反論を口にした途端、愛琉さんの表情がさらに鬼になる。

髪を引っ張る力も強くなって、今すぐ逃げ出したくなった。



「逆らったら、おまえのこと全部バラすけど?」



あの、それって脅しじゃ………


土下座なんかしたくない。

だけどバラされたら、課外授業はダメになっちゃう。

あたしは人間界で“幸せ”を見つけなきゃいけないのに。



「わかった」

だから……ね。


背伸びして愛琉さんの両肩に手を乗せて、まっすぐ見つめる。


「あたし、信じる!」

「は?」

「土下座しない。
でも、絶対愛琉さんはバラしたりしないって、信じるわ!」