お城をバタバタ走っていると、家政婦さんが声をかけてくれる。
「あら、ローナ姫お帰りなさいませ」
「えぇ、ただいま!」
走りながらそれに答えて、手を振った。
街へ出ると、小さい子どもたちの楽しそうな声。
様々な形の泡が、空へと舞い上がっている。
きっと魔法遊びをしてるんだわ。
「あーっ、ローナさまだあ」
数人いるうちの1人が、可愛らしい声であたしの名前を読んだ。
髪を二つにくくった女の子。
「ねぇねぇ、いっしょにあそぼー」
すぐそばまで来ると、あたしのドレスを引っ張って言う。
屈んで目線の位置を合わせて
「ごめんなさい、これから魔法学校に行くところなの」
謝っていると、今度はお母さんらしき人が近付いてきた。
「姫様、帰っていらしたのですね。
お忙しいでしょうに、呼び止めてしまって申し訳ありません」
「そ.そんな、大丈夫ですから。
顔をあげてください」
丁寧な態度をとられ、余計こちらが戸惑ってしまう。
「試験の最中なんですってね。
本試験はいつ頃のご予定で?」