魔力でいっぱいになる部屋。
お城の中の数ある部屋のうち、本のたくさんあるこの部屋は少し埃っぽい。
楼那すずは、ローナ・ベルに戻った。
場所は、人間界からユール・ド・エシャルへ。
突然知らせの手紙が届いた時には驚いたわ。
翌日にはアヴァルア校長先生と帰国。
用件は、一時的にエシャルに戻れというもの。
理由は、人間界での近況報告。
…と、それは表の理由で、本来は人間界に居座りすぎないようにするための予防線。
あくまでも、人間界とエシャルは交じり合うことのない世界。
洋館のみんなは、笑って送り出してくれたけど………
「姫様、ここは杖をもう少し上へ、こうっ」
見えない空気の杖を振りかざして、説明がなされる。
本をパタンと閉じて教育係の両肩を掴んで。
「あたし、魔法学校に行ってくる!」
「姫様っ───」
大きな声で伝えてから、すぐさま部屋を飛び出した。
久々に帰ってきたんだもの。
お城だけじゃなくて、外の世界も歩きたい。