「姫様っ、勉強のじか───」

「えぇ、勉強の時間よね。
今日は物体を浮かせる魔法を学びたいの」


杖を片手に握ったまま本を開いて、重要なところをメモしていく。

物体を浮かせる魔法が上手くできれば、第一段階はクリア。


次に浮かせた物体を動かせるようになれば、きっと掃除や片付けが楽になるはずだわ。



「姫様どうしたのですか!?
まさか熱でも!?」

「やめてよ、熱なんてないわ」


騒ぎ立てる教育係──いわゆる家庭教師に、思わず耳を塞ぐ。


「では、あれだけ失敗を恐れて魔法に消極的だった姫様はどうしたのです!?」


そんな言葉を受け、ピシッと杖を教育係の鼻先へ向ける。

「消極的じゃないわ。
積極的だったけど失敗が多くて周りに迷惑がかかるから、魔法の練習を自制していただけよ」


まるであたしが魔法から逃げていたみたいな言い方じゃない。

あんまりだわ。



「よもや、人間界で何かあったと?」

「もうっ、そんなことはいいから早く勉強を教えてよ!」