「さて、僕はそろそろ部屋に戻ります」

聞いてみたい気もしたけど、間を置かずに言葉を続けられタイミングを失った。


仕方なく、あたしはグラスを片付ける。


「それなら、途中まで一緒に行くわ」



1人でここにいるのは寂しいし、部屋に戻って本の続きを読めばいい。

元はといえば、喉が渇いたから部屋を空けただけなんだし。


「ついでに、誠を部屋まで送るわね」

まだ、眠れそうにもない。


「好きにしてください」

そう言ってくれた彼に、ちょっとだけ甘えて真夜中の暇つぶしをしよう。




「こんなもの使わずに、電気をつけたらどうなんです?」

暗い廊下に電気を点しながら、誠はランプをあたしから奪う。


いいえ、奪ったというより、持ってくれたんだわきっと。


「みんな寝てると思ったから、起こしたら悪いでしょ?
だから電気をつけなかったの」

「暗い中を歩いて、何かにぶつかって音を立てては元も子もないでしょう」

「それは……」