ギッと睨まれているのは、気のせいじゃ……ないよね?


気配を感じてビクビクしながら顔をあげる。

乱暴に雑誌を閉じて、こっちへ近づく愛琉さん。



「おまえ、どっちに向かって箒掃いてんだよ?」

「いや、あ、の……」


迫力がありすぎて、後退りしかできない。


「埃が飛んでくんだけど。
わざとやってんのか?」

「とととととと.とんでもないっ」


わざとだなんて、あなたの被害妄想です。

無意識に愛琉さんのほうへ埃を飛ばしてしまっただけで。



「謝れ」

「ふぇ?」

「惚けた声出してんじゃねぇよ。
さっさと謝れ」


えっと、これはひょっとして、かなり怒らせてしまった?

見下す瞳に、殺気が宿ってる。



「ごめんなさい……」

まだ死にたくなくて、深々と下げた頭。

口をぎゅっと閉じて、床を見つめる。


でも、これで許してもらえる……なんて考えは甘すぎたらしい。


「違うだろ」