ますます理解できなくなって、立ち上がって誠の隣のイスに座る。
それから、誠の顔をじぃっと覗き込んで続けた。
「どういうこと?」
読んでないの?
眺めてるだけ?
それって今だけ?
それとも、本を読んでいるように見えた時はいつもそうなの?
視線を逸らさないままのあたしに、誠はため息をつきながら先に目を伏せる。
どうしたらいいかわからず、向かいの自分のグラスに手を伸ばしかけて。
「本でも読んでいないと、あなたが話しかけるでしょう?
それが迷惑だと言っているんです」
きっぱり言い放たれた言葉に、身が凍ったように固まった。
行き場をなくした片手が空気を掴む。
「今も?」
間をおいて小さな声で質問。
「は?」
「今も、迷惑だって思ってるの?
あたしが話しかけてるから」


