びっくりして、思わずあがった肩。
麦茶とグラスを両手に、恐る恐る振り返った先には
「あぁ、いたんですか」
「いいいいいい.いたんですかじゃないわよ!」
この上なくのん気に言い放つ誠が。
あたしの横に来て同じくグラスを手にすると、麦茶を奪ってイスに腰掛ける。
もちろん、誠の座った目の前のテーブルには分厚い本。
こんな遅くまで読書してるのね。
「ねぇっ、何の本読んでるの?」
灯火の消えたランプと本と空っぽのグラスをなんとか持って、テーブルを挟んで誠の前に座った。
ランプと本をテーブルに置いて、誠が注ぎ終わってから麦茶を空っぽのグラスに注ぐ。
「読んでません」
こっちを一瞬見てから、与えられたのは予想していなかった答え。
「え?」
意味がわからなくて、もう一度答えを促すけど
「ただ眺めているだけです」
やっぱり、言ってることはさっきと変わらない。


