もし隣に誰か住んでいたなら、相当迷惑だったと思う。
部屋から足を出すようになった佐久間さんの叫び声は、しょっちゅう。
それに対して文句をぶつける不機嫌度マックスな愛琉さんの怒鳴り声。
主にこの辺の声が、隣人に聞かれていてもおかしくないわ。
そういう意味では、洋館がどの家とも隣り合ってないのは正解ね。
夜中に騒がれたんじゃ、寝るに寝られないもの。
「あ、ねぇ愛琉さん、そういえば誠は?」
近所が大丈夫だったとしても、洋館内は?
そう考え始めたら、姿の見当たらないもう1人を思い出して。
「知らねぇ、なんで俺に聞くんだよ」
「だって、仲良しそうだから。
それに部屋が近いじゃない?」
誠のことだから、お部屋にこもって読書かしら?
騒がしいのは好きじゃなさそうだし、こっちに出てこないだけなのかも。
「あんなヤツ、ほっとけ。
つーか、さっさと飯作れこの下僕が」
…黒猫のせいだわ。
イライラしてる愛琉さんが、いつも以上に鬼に見える。
「はい、」
小さく返事をして、すぐさま恋千くんと調理を開始した。


