だけど落ち着くのは、まだまだ。
「ヒメを困らせちゃダメ!」
そう言いながら、黒猫を追いかけ回す佐久間さん。
走って逃げる黒猫の先には、睨みをきかせた愛琉さん。
と、愛琉さんを見るなり、早急に黒猫は回れ右。
伸びてくる手をひらりとかわし、あっちこっちをバタバタと駆け抜ける。
同じく捕まえようと必死な佐久間さんも、あっちこっちを駆け抜ける。
「猫と鬼ごっこしてるヤツ、初めて見たかも」
ぼそっと呟いた恋千くんの意見に、小さく頷いちゃったのは内緒。
最終的に佐久間さんにおとなしく捕まえられて。
「あの猫、愛琉に懐いてないんだな」
鬼ごっこを傍観していた里音は、冷静に言った。
確かに、愛琉さんのことを避けている気がしなくもなくもない。
動物相手でさえ、愛琉さんの不敵オーラ且つ無敵オーラは健在だったらしい。
もう外は真っ暗なのに、この時間帯に部屋で暴れてていいのかしら?
近所迷惑にならないの?
って、思い返せば洋館の周りに家はほとんどなかったんだった。
あったとしても、最短距離で数十メートルは先ね。


