そんな気持ちを悟ってか、恋千くんがあたしの服を軽く引っ張る。
「何作ろっか」
ニコッと微笑んでくれるけど、包丁片手にその笑顔はどこか怖い。
あたしは冷蔵庫の中身をチェックしてから、顎に手を当てて献立を数種類思い浮かべ
「あっ、ヒメ───っ!」
次の瞬間、佐久間さんの声と一緒にガシャンと壊れるような音が。
「うわ………」
すぐ隣から、声にならない声が聞こえる。
「だから鎖に繋いどけって」
次に、怒っているような呆れているような口調。
恋千くんのそばから離れようとした黒猫は、まず高いところへ上がろうとジャンプ。
しかし、ジャンプした先にはビンに入った調味料の数々。
案の定、黒猫はビンを落下させながらキッチンを飛び越えてしまった。
結果………
「危ないからオレがやるよ。
すずは恋千と料理してて」
幸いにも1つだけで済んだものの、割れてしまったビン。
早々に箒とちりとりを里音が持ってきて、飛び散った破片を集めてくれた。


