休む間もなく、仕事仕事仕事……って。
「こんなんで、“幸せ”なんて見つかるのかしら」
はぁー‥。
深いため息をひとつ。
零しながら、扉を開く。
黒が基調の部屋。
ちょっぴり、怖い雰囲気。
それが、この人には似合っているのかもしれないけれど。
「遅い」
ベッドの上で、雑誌を広げながら飛ばしてくる文句。
目線は雑誌を向いているから、あたしのほうは見ていない。
「ごめん、なさい」
言い返せば怒らせてしまうことを、早い段階で学んだあたしは静かに謝った。
「窓、開けるね」
それから閉めきりの窓を開ける。
窓の外に見えるのは、綺麗に咲いた花たち。
ふぅー、とってもいい空気ね!
って、違う違う。
そんなことより掃除しなくちゃ。
掃除機は音がうるさいからって、愛琉さんの隣部屋の誠さんに禁止されている。
ただ、つい箒で埃を集めるのに一生懸命になって。
「ごほっごほっ」
愛琉さんが咳をするまで気づかなかった。


