里音は恋千くんと目が合うと、複雑そうな笑みを浮かべる。
そして一言。
「おかえり」
それを聞いて、今度は嬉しさを表情いっぱいに広げた恋千くんが一言。
「ただいま」
良かったね、恋千くん。
ちゃんと“ただいま”って言えたじゃない。
それって、家に帰ってきたって証よね?
やっと、また全員がこの場に揃うことができた。
これでこそ、人間界って感じだわ!
「あっ、黒猫さんだ」
みんなが恋千くんを見つめる中、ふと佐久間さんが声をあげる。
足元にちょこんと座った黒猫に、ようやく気づいたみたい。
「動物だーいすき!」
両手を伸ばして、捕まえようと試みたらしいけど。
「うわっ、あっ、こら待って」
するりとかわして、黒猫は洋館の階段を駆け上がっていってしまった。
あたしたちのそばにはいてくれても、しつこいのは好まないらしい。
でも今外に逃げ出さないってことは、洋館に居座ってくれる可能性もあるのよね。
黒猫をあたしの使い魔として人間界に置いておくのも、わりと大丈夫かもしれないわ。


