◇
「ヒメっ!!」
洋館の玄関に入ったところで、真っ先に飛びついてきた人がいた。
「無事だったんだね、良かったホントに良かった安心したーっ」
「ホタル、俺の可愛いペットに馴れ馴れしく触んないでくれる?」
一瞬にして、お隣さんから漂う不穏なオーラ。
「うわぁぁぁぁっ、カミサマいつの間にぃぃぃぃ!?」
果たしてこれは、本当に気づいてなかったのか、気づかないフリをしていたのか。
どちらにせよ、佐久間さんの叫び声を聞きつけて他のみんなも集まって。
「何だよ、帰ってこなくても良かったのに」
悪態をつきつつも、どこか優しい気もする愛琉さんに
「まったく、迷惑な人です」
パタンと本を閉じた誠。
「みんなが寂しがってると思って、仕方なく帰ってきてあげたんだよ」
照れ隠しするように、恋千くんは言い張った。
素直に後を追ってきた──正しくは、洋館までの道を先頭になって歩いてきた黒猫は欠伸をしながら伸びる。
それを一番に見つけたのは、意外にも里音で。


