どうしたのかしら?
疑問に思っていると、フッと笑ってから恋千くんは最初と同じく川に目を向ける。
「気を遣って離れてくれたんじゃない?
あの黒猫」
それから、そのまま話を続けた。
「……なんで、何にも聞かないわけ?」
黒猫が気になったけど、話を振られたからあたしも川に視線を移動。
恋千くんの隣に腰を下ろしてから口を開く。
「聞いてもいいの?」
あたしには、よくわからなかったの。
どうして家出なんかしたのか。
質問したいけど、それって聞いていい話?
また、あたしが余計に事態を悪化させちゃわない?
「いいよ。
でも、できれば、すずには知られたくなかったな」
静かなトーンで語るその言葉が、なんだか遠くて。
「何から話そうか。
俺が家出した理由とか?」
恋千くんを見れないまま、彼の声が水の流れる音に消されないよう耳を澄ます。
「窮屈だったんだよね。
洋館にいると、周りのヤツらと自分比べて悔しくなるし」
「うん」
「あ、俺が捨て子だって話はもう聞いた?」


