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月日が流れること、さらに一週間と数日。
「楼那さん…大丈夫?」
放課後、窓から外を眺めていると琴葉ちゃんの声がした。
振り返って座っている彼女を見れば、いつもながら夕陽に照らされて。
キラキラ光る綺麗な髪に、すっとした輪郭。
「えぇ、大丈夫よ」
向けたのは、そろそろ慣れてしまいそうな作り笑い。
「本当に?
楼那さん、最近ため息ばかりじゃない?」
「そう?」
「窓の外見ながら、ぼーっとしてるし」
否定はできない。
事実、だと思うから。
「大丈夫!
ちょっと考え事してただけなの」
笑顔で言って、教室のドアのそばまで行く。
「あたし、もう帰らなきゃ」
振ろうと手を挙げた時、琴葉ちゃんは何かを思い出したように呼び止めた。
「そういえば、最近帰り道に猫がいてさ。
優しくすると後ついてきちゃうから、気をつけたほうがいいよ」
「猫?」
「そ。首輪つけてたから、どっかで放し飼いしてるんじゃないかな」


