3ヶ月の間に“幸せ”を見つける。
課題を終了させてエシャルに戻って、正式に姫となる。
そしていずれ、エシャルにあるすべてを守る立派な次期王妃となる。
ってことは、人間界にはもう……来れなくなるの?
この課題が終わったら、あたしは“ここ”にはいられない?
「あら、そういえば可愛い顔した住人さんがいないんじゃない?」
え?
辺りをキョロキョロ見回しながら、ふとアヴァルア校長先生が言う。
「あなた、人間界で起こした問題は責任を持って解決しなくてはダメよ」
掛け時計の針を見つめたまま忠告されたかと思うと、にっこりと微笑みかけられた。
「そろそろ時間ね」
呟くような声は、響き渡って。
赤い花びらが宙を踊った瞬間、アヴァルア校長先生は煙のように消えていく。
きっと、恋千くんのことだ。
姿が見当たらないから、何かあったと察したのね。
それを、あたしがエシャルに戻る前に解決しろ、と。
薔薇が綺麗になくなってしまったその場所を、何とも言い難い気持ちでただただ見つめた。


