「まあまあ、それより今はホタルを引き離すのを手伝えって」
返事に焦っていると、里音がアヴァルア校長先生から佐久間さんを引き離すことを2人に促す。
おかげで助かったけど、黒猫はいったいどこに行ったのかしら?
人間界に置いておくにも居場所がわかってないと不安だわ。
なんせ魔力の強い使い魔だもの。
悪戯をしてないか心配。
「それから、すず」
「は.はいっ」
つい先程まで佐久間さんと会話をしていた彼女に名を呼ばれ、緊張が全身を駆け巡る。
どれだけ時間が経っても、アヴァルア校長先生の前ではリラックスなんてできない。
あたしはエシャルの姫という立場にあるけど、魔法学校ではアヴァルア校長先生のがずっと偉い方だし。
たぶん、触れちゃいけないと思うけど年齢的に見ても先輩よね。
「あなたが人間界にいられる期限はあと約3ヶ月。
それまでに“幸せ”が何か気づけるように努力なさいな」
柔らかくて、でもきっぱりと告げられる。
あと、3ヶ月。
時間の流れをすっかり見失っていた。
人間界にいられる期間の半分が、過ぎたんだ。


