でも、佐久間さんのせいじゃないわ。
確かに、逃がしてしまったことは大変な事件だけど。
「ヒメごめんね、ごめんね、ぼくのせいでごめんね、ぼくがダメだからこんなことに」
「気にしないで!
黒猫を籠にいれたまま佐久間さんの部屋に放置しっぱなしだったあたしが悪いんだわ」
アヴァルア校長先生が来ないから、すっかり黒猫を引き渡すことも忘れかけていたし。
そもそも、佐久間さんの部屋じゃなくて自室に置いておくべきだったのよ。
どうしてそんな簡単なことに気が回らなかったのかしら。
「違うよ、ぼくのせいだ。
ぼくが可哀想って思わなければ……」
さっきから、耳に入り込むすすり泣きが止まない。
「黒猫が可哀想だったの?」
ティッシュを取って佐久間さんに渡しながら、質問。
「うん、だってね、籠に閉じ込められてるんだよ?
外に出たいのに出られないんだよ?
あぁ、ぼくと違って外に出たがってるこのコは自分じゃ出られないんだ、って思ったの」
鼻をかみながら、ひとつひとつ説明をしてくれる。
「ぼくは出ようとすれば自分で出れるのに、どうして黒猫は独りじゃ出れないの?」
…そっか、黒猫の立場を自分と重ねていたのね。


