里音から袋を受け取って、渋々洋館に向かう。

途中で振り返ると、もう2人の姿はグラデーションの世界に溶け込んでいた。



はぁ、仕方ないわ。

おとなしくみんなの帰りを待ちましょう。

それに、佐久間さんと話をするのにちょうどいい機会だもの。









「サヨナラ──‥」



ダイニングテーブルに置かれたメモには、たったこれしか書かれてなかった。

どこかのページを破いて書いたのであろう紙切れ。


紙切れだけど、単純に紙切れだなんて言えない。

きっと、これはメッセージだと思うから。


恋千くんがあたしたちに向けた、何か意味のあるもの。



預かった食材を冷蔵庫やら棚やらに片付ける。

袋を畳んで縛って。



………親に捨てられるって、どんな気持ちなんだろう。

あたしは恋千くんを捨てないって、ちゃんと言ってあげれば良かった。



「ヒメぇぇぇぇ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!!」


突如、ドタバタと大きな足音。

しがみつくように叫び謝るのは、もちろん佐久間さんなわけで。


「どうしたの?」