もうすでに洋館の近くだったこの道は、夕暮れ時のわずかな光に照らされて。
「恋千のこと見なかったか!?」
息を切らせた愛琉さんが、あたしの肩を強く掴む。
「え、あ、えっと……」
突然のことに、すぐ返事ができない。
様子からは、慌てているか急いでいることが伝わってくるけど。
「恋千がどうかした?」
言葉が出てこないあたしの代わりに、尋ねてくれた里音。
返ってきたのは予想外すぎる答えで、
「あいつ、家出しやがった」
「え、家出!?」
思わず聞き返してしまった。
「置き手紙だけ残して、荷物持って出てったらしい。
今、誠と探してる。
留守番はホタルに頼んであっから」
「ならオレも探すよ」
「あたしも!」
続けと言わんばかりに、全員が順々に喋り出す。
「いや、もう日も傾いてるし危ないから、すずはホタルと家にいたほうがいい。
はいこれ、冷蔵庫にしまってきて」
ただ、飛び出す気満々だったあたしは、どうやら留守番になりそうな予感。


