「へ?じゃないよ、まったく。
ずっと待ってたのに」
ドカドカと近寄ってきて、こちらを見下ろす。
不思議と苛立ちはなかったけど、代わりに困惑。
重ねたお皿を両手に、どうしようかと動作が一時停止。
「あんまりすずを責めるなよ。
おまえだって、たまには自分で起きてくればいいだろ」
返事できずにいると、椅子に座ったままの里音が言った。
あたしを見ていた恋千くんは、振り返って里音を見ると再び口を開いて。
「里音はいいよね。
俺と全然違うから」
嘲笑うかのような口調。
何かを言い返すわけでもなく、里音はその言葉にただただ零すため息。
「揉めるなら外でやってください」
それから、間に誠が入る。
「別に揉めるとか揉めないとかの問題じゃない。
恋千が1人で拗ねてるだけだ」
言い方だけかもしれないけど、里音は呆れているみたい。
会話の内容をいまいち把握できないから、あたしは沈黙を保ったまま。
「すず、支度できたら行こう」
促されて、とりあえず食器の片付けを続けることにした。


