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それから数日後の日曜日。
目覚ましが、大きな音を立てて朝を告げる。
寝坊するわけにいかないから、いつもより早めの時間でセットしていた。
なんとか起床。
寝癖で広がった髪を整えるため、洗面所へ。
まだ開ききっていない目をこすりながら、廊下を歩くこと数秒。
「きゃっ」
突如部屋から出てきた人と衝突事故を起こしてしまった。
バサッと床に何かが落ちる音。
「ごめんなさいっ」
謝りながら、落ちたそれを拾おうと手を伸ばす。
と、あたしより先にぶつかった相手が勢いよく拾い上げて。
「見なかったことにして」
目も合わせずに横切っていく。
恋千くん………?
いつもの休日なら、まだ寝ていてもいい時間なのに。
あたしが朝食を準備して呼びに行くまでは、たいてい部屋にいるわよね?
さっきの見なかったことにって、落とした物のこと?
一見ただの手帳に、びっしり文字が書き込まれたように見えたけど。
それに、書き込まれた内容は、人間界の文字に慣れていないあたしには読めなかったし。


