「琴葉ちゃん、あたしもう帰るけど」

「うん、私はまだここにいるよ。
気をつけて帰ってね」


鞄を肩にかけながら、琴葉ちゃんを振り返って

「じゃあ、また明日っ」

手を振ると、微笑んで振り返してくれた。


夕陽に照らされた琴葉ちゃんは、いつもの何倍も綺麗に見えて。

なんだか、不思議なオーラ。


前に本で読んだことがあるけど、人間界には大和撫子っていうのがあるのよね。

もしかしたら、琴葉ちゃんはそれなのかもしれないわ。



「ごめんな、」

昇降口を出たところで、隣を歩く里音が言った。

何に対しての“ごめん”なのかがわからなくて、返事をせずに続きを待った。


「愛琉と帰りたかっただろ?」

「え?」

「あいつ、今日は外せない用事なんだって。
詳しくは聞いてないけどさ」


外せない用事?

困ったような笑顔の里音。

あたしがいつも愛琉さんと帰ってるから、そのことを気にかけてくれてるのかも。


と言っても、愛琉さんと帰るのは自然な流れであって特別深い意味はない。