「そしたら、部屋から出られなくても誰も何も言わないよね?」
「だから……飛び降りたの?」
怪我をしようとして?
打ち所が悪かったら、死んでたかもしれないのに?
「ヒメには、わかんないよ。
ぼくはずっと邪魔者なんだ。
いちゃいけないんだ」
普段なら綺麗だと思える芝生が、今は素足を刺すようで痛い。
どうして、そこまで自虐的になるの?
「ねぇ知ってる?
火ってすごく熱いんだよ」
突然話題が変わると、腰に回っていた佐久間さんの腕が今度は首の後ろへ回された。
「押し入れはね、狭くて真っ暗で」
首に顔を埋められているせいか、苦しそうな吐息を感じる。
「本の角は痛いし、タンスは固くて冷たくて、階段は怖い」
声も体も、震えてる。
「熱湯は熱くなった服が肌にくっついちゃうから大変だし、ハサミは髪を知らないうちに切っちゃうんだ」
これは、なんの……話?
ううん、いつの話?
「閉じ込められたら出られないんだ。
ぼくは、ずっとずっとずっと独りぼっちで」


