「佐久間さんっ!?」
びっくりして呼び止めても、もう遅かった。
一瞬あたしを振り返った彼の瞳には涙。
「く.来るな!」
叫んだかと思うと、再び外に視線を向けて。
前方に倒れ込むから、止めなきゃと自然に足が佐久間さんの元へ動く。
黒猫の入った籠は、床に置いて。
このまま倒れ込んだなら、頭から真っ逆さまだわ。
それに、ここ二階だし。
一階の天井が高いから、一般的にいう二階よりずいぶん高さがある。
「佐久間さんっ!」
なんとかしなくてはと、追いかけるようにあたしも飛び出して窓から外へ。
飛び出しながら、片手を広げて杖を出す。
風の魔法を使えば、落ちた時の衝撃を和らげることができるのに。
光の粒子が集まって、杖が現れるまで数秒。
これじゃ、その間にすでに地面にぶつかってしまうわ。
必死の思いで佐久間さんの手を掴み、一緒に落下していく中。
………え?
地面すれすれのところで、ふわりと体が宙に浮かんだのはきっと気のせいじゃない。
この感じ、魔法だわ。


