落ち着かせるように言い聞かせても、なぜだか黒猫は籠を引っ掻いてバタバタ。
「慌てなくても、あたしはあなたを食べたりしないわ。
アヴァルア校長先生に頼んで、ちゃんと魔界に帰してあげるから」
予想以上に軽い籠を目線の高さまで持ち上げて、暴れる当人を見つめる。
………が、どうも様子がおかしい。
さっき入ろうとしていた扉のほうを見たまま、ずっと籠を引っ掻いて。
そういえば、黒猫は災いをもたらすって話だったわ。
だから、洋館に現れたなら誰かに災いが運ばれてしまったということで。
黒猫の入った籠をぎゅっと握りしめながら、目の前の扉に触れた手。
月明かりだけで歩いてきたから、方向音痴なあたしは場所がよくわかってなかったけど。
掃除をするのにあちこちの部屋に行っていたから、来た道を思い返せばここがどこかくらい察しがつく。
嫌な予感に駆り立てられて、勢いよく扉を開いた。
途端に、風があたしの髪を後ろ向きに揺らす。
部屋に入ってすぐ真っ正面の窓は開け放たれて、今にもそこから人が飛び降りようと………


