うーん…確かに、それもそうよね。
ただ、洋館だとしてもどの部屋かが問題。
部屋なんてたくさんあるんだから。
「あくまでも、可能性です。
今はまず、今日あったことをみんなに伝えましょう」
果たして、誠は本を読んでいるのだろうか。
目線は本なのにあたしたちの話を聞いているから、ただ眺めているだけに感じる。
黒猫……か。
洋館に現れたなら、誰かに災いが降ってくるってこと?
「ヒーメーっ!」
大声が聞こえたかと思えば、見えてきた洋館の窓から手を振っている佐久間さんが。
「ホタル、近所迷惑」
「窓を開けられるだけ、回復したということですよ」
2人がごにょごにょと話していたけど、気にせずにあたしは両手を上げる。
「ただいまーっ!」
それから、佐久間さんまで届くように精一杯両手を振った。
「おかえりーっ!」
もちろん、相手も全力で手を振り返してくれたことは言うまでもない。
きっと、洋館の中では愛琉さんがうぜぇとか言って、それを里音が宥めているんだわ。
簡単に想像できちゃって、自然と笑みが零れた。


