それから数分走れば、すぐに到着。
火災現場付近には、傍観者が何人もいる。
その上、炎の勢いは止まることを知らない。
「消防車はまだ来ていないみたいですね」
周囲を見渡したかと思うと、誠が近くの人に何かを話しかけていた。
「すず、ここは危険だ。
少し離れたところから黒猫を探そう」
じっと燃え盛る家を見ていると、不意に引っ張られる腕。
距離を置こうと足を進めた時、サイレン…とは違うかもしれないけど音が聞こえた。
あれが、“消防車”なのかもしれない。
エシャルには、そんなものないからわからないけど。
「ねぇ恋千くん、なんだか胸騒ぎがするの」
引っ張る相手に抵抗して、その場に立ちすくむ。
「胸騒ぎ?」
「…やっぱり、あたし火事の様子を見てくるわ」
「待って、すずっ!」
来た道を回れ右。
すかさず、今度は誠の手があたしを捕まえて
「近づくなんて危険です。
それに消火の邪魔になります」
……それはわかってる、けど。


