感じた気配のままに、西へと進む。
脳裏に浮かんだ風景と同じ道を通って………
「ちょっと待って、すず。
なんか様子がおかしい」
前に出た恋千くんが、片手を広げてあたしを止める。
「人が集まっていますね。
事件でしょうか」
誠は、相変わらず本を抱えたまま冷静に言った。
前方に広がるのは、なぜか人集り。
そうだ、黒猫は屋根からとある家を見下ろしてた。
その家がどこかわかれば、黒猫だってすぐに見つけられるかも。
再度、気配を調べようとした瞬間だった。
「あれ見て、煙が出てる!」
慌てた口調で恋千くんが、遠くの空を指差して。
「火事……でしょうか」
誠の解釈に、嫌な予感がよぎる。
黒猫が災いをもたらすのなら、火事もそれが原因だっておかしくない。
「行ってみましょう。
あたしが気配を感じたのも、確か向こうのほうだったわ」
突然の災害に、あたしたちは急いで現場へと向かった。
お願いだから、誰も怪我をしていませんように。


