父「昔、姫華がさらわれたこと覚えてるか?」


あ……


10年前――

7歳の時、確かにあたしは一度だけさらわれたことがある。


いつも優斗と行動してたけど、その日はたまたま、優斗が学校に忘れ物をして。


一緒に戻るのがめんどくさかったあたしは、優斗が戻るまでその場で待つことにしたんだ。


だけど、その待ってる間に、目の前に黒いポルシェが止まって。


あたしは抵抗したけど、まだまだ子供で、簡単な護身術くらいしか習ってなかったあたしはすぐに捕まった。


捕まるとき、追い付いた優斗が必死に叫んでるのが聞こえた。


けど、あたしはすでに、車の中で。



その後、どこかの倉庫に連れて行かれた。


口を割れば楽にしてやるって言われたけど、幼いながらに口を割るのはダメだと感じて、黙秘を続けてたら、今度は大きな屋敷に連れて行かれた。