声がないのなら



「来い…」

床に転がった私に手をさしのべてくれたのは…

ユウリだった。


私は震えながらユウリの手を握った。



先輩達の笑いがとまりユウリを一瞥する。
「ちょっと。あんた。ここ女子便だよ?」
「…こういう事やめてくれないかな..?」
ユウリはそういうと私を引っ張った。

そして走った。

私もユウリの背中を眺めながら走った。



廊下の曲がり角を曲がり
ユウリが足をとめた。

「お前、マイ、いつも..あぁなのか?」

さっきの事だろう。
やっぱ言わなくちゃいけないよね。…

私は頷きノートを出した。
水をかけられたからノートは濡れていた。
『また助けてくれてありがとうございます』

この人には礼ばっかだ。

「気にすることない…、けど…」




いい匂いがした。

ユウリは私を…


私はユウリに抱き締められていた。


いきなりで戸惑う。

「マイは..無理してるだろ?」

私は見透かされた気分になった。


なぜこの人に分かるの??

ユウリはより私をきつく抱き締めた。

でも反抗しなかった。
なんだかユウリは暖かくて…、
…お母さんみたいだ。

お母さんに抱き締められた事は
ないけれど
お母さんに抱き締められると
こんな感じなんだろうと
勝手に思っていた。


「学校行きたくないなら俺んとこ来い」




私は頷いていた。


ただ震えながら
ただ泣きながら
私は彼に抱きついていた。