「君、名前なんて言うの?」

俺は下に転がっていたボールをカゴに
投げた。

「…」
「俺はユウリ」
「…」
「ネームプレートが緑だから2年生?」
「…」
「俺が先輩だな。」



「…」

「もしかして言葉話せないのか?」
「…」
彼女はためらうように頷いた。



―話せない。

という事を否定しない。

「ゴメン」



彼女はカバンからノートを取り出した。

『いいんです。嫌いになりますよね?』

「嫌いになる?なんで?」

『わたし。嫌われてます。』

言いたくない事 言わせてしまった…。

「俺は嫌いなんかじゃない。」
本心だ。
だから強く言った。


『声があるってどうですか?』

「…声は、…」

「声は俺には必要ない」

なんで あんな事を言ってしまったんだろう。

『不思議な人ですね』

と彼女は静かに優しく笑った。

「そうかな?」