昼の部屋、暗がりで。



寒いかと訊いたわりに、あたためるものを渡してくれたりはしなかった。


私も何も催促しなかった。


ひとめで彼への恋に落ちた身では、あれこれ言って嫌われたくないと思ったからだ。


私がこの部屋に来るのを拒むことが不可能だったように、彼だって好んで私をこの部屋に入れたわけじゃないと知っていたから。


彼の優しさは通り一辺倒で、特別な想いなんてないのがわかる。


言葉は優しいけれど、心はなくて、ただ発されるだけ。


彼にとって会話は、何度も繰り返される、単なる暇つぶしに成り下がってしまっているのかもしれない。


私がなんて返そうと、彼の中では既に答えが決まっているのだ。


“氷”のような思惑が、触れる場所から伝わってきてた。


否──そうでもしないと彼は、深入りしないようにしなければ、やりきれなかったのだろうとも、今ならわかる。


そう、音をたてて崩された今なら。