孝輔は、昼食も食べずにコンピュータに向かっている。

 帰ってきてから、ずっとそうだった。

 まるで狂ったように、解析に打ち込んでいるのだ。

「ああなったら、ほっといていいんだよ」

 直樹は、笑いながら食事を口元に運んでいる。

「これはダメです」

 孝輔のために準備したエリアまで手を伸ばそうとしてきたので、料理を食器ごと彼から守った。

 作業が終了したら、きっと彼はおなかをすかせているだろう。

 それが何時になるかは分からないが、その時までこれをとっておいてあげたかったのだ。

「どうせ夜中までかかるさ…それに」

 サヤの抱えている届かない料理に、それでも往生際悪く手を伸ばそうとする直樹。

 体格の割には、非常に食欲旺盛だ。

「それに、もしE値の解析が完成したら…」

 彼女は、自分の分の料理を直樹の方へと押し出した。

 食べるなら、こっちをどうぞ、と。

 だが、彼は首を横に振って、どうしても孝輔の料理へと執着を見せるのだ。