「新人いじめ?」

 サヤに復唱されるその部分に、孝輔はどきっとした。

 現実の話でいけば、サヤ自身が新人にあたる。そして古株は孝輔だ。

 もしや彼女は、孝輔がいじめるとでも思っているのだろうか。

「あ、いや、別に新人だからって…オレは…」

 だから、何とも間抜けな言い訳を始めてしまった。

 第一、いじめているつもりはない。

 確かに、最初は疑いを持ちはしたが、フタを開けてみたら彼女はれっきとした霊能力者だったのだ。

「そう、なのね」

 孝輔の言い訳など、彼女の耳には届いてなかった。

 呆然としたサヤの黒い瞳が、壷の方を向く。

「へ?」

 意味が把握できないまま、孝輔は彼女が壷に近づいていくのを見た。

 S値のない、新人の壷。

「……試してみますね」

 一度彼の方を振り返って、にこりと笑う。

 何を試すというのか。

 孝輔は、まったく空気が読めていなかった。

 そして。

 彼女は。

 壷を撫でながら。

 こう言った。

「お前が 一番 美しいね」

 ──部屋のどこかで、S値が大きく乱れた。