「はぁぁ?」

 孝輔は、うっかり小型端末から、手を離してしまいそうだった。

 そこで何故、サヤの名前が出てくるのか。

「はい?」

 呼ばれた当の本人は、きょとんとしている。

 彼女は、さっきからあらぬ方を見ているだけで、非常に静かなものだった。

 着物少女には、さして関心もないようだ。

「サヤちゃん、あの子のことをどう思うかな~?」

 20も半ばほどの女性に向かって言う言葉ではない。

 まるで小学生相手だ。

 我が兄ながら、孝輔は唖然とした。

「かわいらしい子ですね」

 にこっ。

 感想は、至ってシンプル──かつ、霊相手とは思えないもの。

「じゃあ、その他にかわいい子はいる?」

 直樹は。

 何を言っているのか。

 うさんくさい営業スマイルで、サヤから何を引き出そうとしているだろう。

 彼女は、首を傾げた。

 兄の言った言葉が、何者か理解しきれなかったように。

 少しして、その唇が「ああ」と動いた。