「母さん、行って来まーす」



「行ってらっしゃーい」



お母さんに一言告げて、玄関へ向かう。



そして、早く靴を履いて、家を出た。



「緋結ちゃーん!」



俺が緋結ちゃんを呼ぶと、緋結ちゃんは立ち止まって、振り返った。



でも、直ぐに向き直ってスタスタと歩いて行く。



「置いて行かないでよ!」



俺は追い付いて、緋結ちゃんに文句を言う。



でも、返事は無い。



「ひーゆちゃーん」



俺は緋結ちゃんの顔を覗き込んだ。



「緋結ちゃん、緋結ちゃん、緋結ちゃん」



俺は何回も呼ぶ。



そうして、やっと答えてくれた。



「何?」



「俺も緋結ちゃんと一緒に行こうと思って」



「嫌。それとちゃん付けしないで」



「うーん。じゃ、緋結って呼んでいい?」



緋結ちゃんは何も言わずコクッと頷く。